バッファローは、1825年のエリー運河の開通を機に発展し、19〜20世紀初頭には製鉄業や機械産業で栄えた歴史ある街です。 冬は湖効果による雪が厳しい日もありますが、夏は湿度が低くとても過ごしやすい気候です。 手羽先料理「バッファローウィング」やアメリカンフットボールチーム「バッファロー・ビルズ」でも知られています。 ナイアガラ滝まで車で30分、トロントまで2時間弱で行くことができます。 また、自然に恵まれ、国立公園も多くあるため、非常に充実した日々を過ごしており、オススメの地域です。2年間の留学で得たものは、研究の経験に加えて、多様な文化に触れることで価値観が広がったこと、研究者への深いリスペクトを抱くようになったこと、とりあえず前に進むサバイバル能力が身についたこと、日本や自分自身を見つめ直すきっかけになったこと、そして多くの素晴らしい出会いがあったことです。 特に留学初年度は、異文化に適応することに人生で最も苦労した時期だったと感じており、研究以外の面でも人として大きく成長できたと実感しています。 そして改めて、自分ひとりの力では限界があり、家族や友人、先輩・後輩方の支えがあってこそ今の自分があるのだと実感しました。 最後になりますが、このような貴重な研究の機会をいただいた上原財団の皆様に、心より感謝申し上げます。 これからも努力を重ね、患者さんの力になれるよう、研究と臨床の両面から貢献してまいります。私はもともと、人の命を直接救えることに惹かれ、手を使う細かい作業が好きだったこと、そして「医龍」の朝田に憧れたことから外科医を志しました。 医師として日本各地で地域医療と外科研修を重ね、多くの患者さんと向き合う中で、手術が命を救う力を持つ一方で、外科だけでは救えない現実にも直面しました。元気に退院される患者さんの笑顔は励みである一方、再発や治療手段が尽きたときの会話は今も心に残っています。 こうした経験から、外科に加えてがん研究にも携わりたいと思うようになりました。2023年4月より、ニューヨーク州バッファローにあるロズウェルパークがんセンターで研究活動を行っています。 局所のがんを手術で取りきったはずなのに再発してしまう患者さんを多く見てきた経験から、従来の標準治療だけでなく、より長期的な生存につながる治療法の必要性を強く感じるようになりました。 その関心から、ロズウェルパークで「組織光線力学療法(I-PDT)」という先進的な局所治療の研究に取り組む機会を頂きました。I-PDTとは、光感受性物質を腫瘍に投与した後、特定の波長の光を照射することで活性酸素を発生させ、がん細胞を選択的に破壊する治療法ですが、現在はこれをいかに全身の免疫を賦活化させる治療に応用できるかを検討しています。週末の空いた時間には、観光や現地のイベントに参加するなどして、地域の文化や人々との交流も楽しみました。 ロズウェルパーク癌センター千 田 航 平弘前大学消化器外科外科医として研究に向き合ってみてアメリカ東海岸 New York 57 ←バッファローのダウンタウン
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