おり、経済的な困難によって留学先での研究活動を継続するこ2023年5月にDr. Barry Borlaugの指導のもと、Mayo Clinic心血管部門での研究を開始して以来、左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)患者における運動時の血行動態や心肺機能の研究を行っています。 HFpEFは加齢やメタボリック症候群などの増加とともに、有病率が上昇し続けており、本邦においても心不全パンデミックの主因です。 安静時に明らかな異常所見が乏しいことによる診断の難しさや治療選択肢の少なさも大きな問題となっています。留 学 先の研 究 室は、運 動 負 荷 右 心カテーテル 検 査によってHFpEF患者の病態生理を解明する試みを先進的に行っていることが特徴的です。 さらに、本検査と心エコー図検査を同時に行い、心機能や弁機能を評価し血行動態との関連を調査することも行っています。 症状が出現する運動時の評価を行うことによってHFpEFの病態生理をより深く追究しています。 このような貴重なデータを用いて、これまでに、HFpEF患者における運動時の僧帽弁逆流に関する研究成果をEuropean Journal of Heart Failure誌に発表することができました。 また、HFpEFのイメージングとメカニズムに焦点を当てた総説を執筆する機会もいただきました。私の主な役割は、同時心エコー図検査の実施であり、多くの症例に直接関わることで貴重な経験を積んでいます。この経験を通じて、本検査を実施するうえで必要な特殊な技術を磨き上げるとともに、運動時の血行動態と心機能の関連について洞察を深め学問的な知見を得ています。 この検査を利用した複数の前向き研究に現在関与しており、データの収集や解析、論文執筆を楽しみにしているところです。 2026年3月の留学終了までに、この貴重な環境を最大限に活用し、留学先でしかできない独自の研究成果を目指しています。留学期間中は、近年でも最大の円安および物価の高騰となってとは簡単ではありませんでした。 そのような中での助成でしたので、私だけではなくともに渡米し生活を支えてくれている家族にとっても非常に大きな支援であったと感謝しています。留学先のあるミネソタ州ロチェスターでは厳しい冬の寒さと心地よい暖かさの夏が印象的でした。 この地で出会った多くの留学生との関わりは、この留学で得られた最高の経験の一つです。研究者として尊敬できる仲間たちとのつながりを持てたこと、家族ぐるみでの付き合いができたことは、私の生涯の糧となる貴重な出来事でした。 これらの機会に恵まれたのも、上原記念生命科学財団からの支援があったからこそです。 この場を借りて、改めて感謝の意を表します。Mayo ClinicDepartment of Cardiovascular Medicine原 田 智 成群馬大学医学部附属病院検査部Mayo Clinicでの臨床研究留学アメリカ中央部 Minnesota71 ←留学先のラボはダウンタウンから 徒歩数分の Saint Marys Hospital Campus にあります。
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