一年のあゆみ_2024年度
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やり遂げることができました。 厚く御礼申し上げます。皆さん、St. Louisという地名をご存知ですか? 2023年WBCで活躍したNootbaar選手が所属するCardinalsの本拠地です。Missouri州東部に位置し、かつては全米第4の大都市として西部開拓時代を支えました。 現在のSt. Louisは一部地域で治安の課題が指摘されていますが、危険なエリアを避ければ、都市の利便性と豊かな自然が調和し、人々もフレンドリーで大変住み心地のよい街です。 象徴的なGateway Archは高さ192mで、アメリカで最も高い記念碑として国立公園の中心となっています。 そんなSt. Louisにキャンパスを構えるのが、Washington University in St. Louis(WashU)です。 Hidden Iviesに数えられ、中西部のHarvardとも呼ばれる名門で、26名のノーベル賞受賞者を輩出しています。 特にWashU Medicineは全米屈指の評価を受け、2023年・2024年のBRIMR Rankings of NIH Fundingで全米2位という輝かしい実績を誇ります。私は産科医として周産期診療に携わる中で、子宮収縮の重要性を痛感し、学位研究では子宮収縮抑制薬がヒツジ胎仔に与える影響を生理学的に調べました。 そこから母体生理学にも関心が広 がり、子 宮 収 縮メカ ニ ズ ム の 研 究 で 名 高 い E n g l a n d Laboratoryへ、2023年6月から2年間留学することを決意しました。 海外で初めての研究分野に挑み、全て英語で意思疎通する環境は非常に刺激的でした。 Comfort Zoneを飛び出した高い負荷の中でも、研究室の仲間たちが基礎から親切・丁寧にサポートしてくれ、毎日大いに助けられました。私のテーマは「子宮収縮を修飾する因子とそのメカニズム」で、1年目はKイオンチャネル、2年目はオキシトシン受容体に注目し、肥満や遺伝子変異がどのように子宮収縮に影響するかを追究しました。 研究が思うように進まず苦しい時期(イベントが少ない1-2月とも重なりとてもつらかったです)もありましたが、何とか耐え忍び、国際学会での発表(2演題)や筆頭著者論文(1本)、共著(3本)など成果を残せました。 日々生きた英語に揉まれ、英語力も大きく向上しました。プライベートでは家族と数えきれないほど旅行し、ラボメンバーから「また旅行?!」と驚かれるほどアクティブに過ごしました。 家族ぐるみで仲良くしてくれる友人もでき、ハロウィン・感謝祭・復活祭・BBQなどアメリカ文化も堪能できました。 アメリカ生活を家族と満喫し、最強の絆を手に入れたことは、留学最大の宝物のひとつです。 この留学で、日本では出会えなかった人々や価値観に触れ、自分の「当たり前」が揺さぶられる経験をしました。 異文化や多様な考え方を受け入れる柔軟さを養うと同時に、自分の信念・価値観・存在意義(私が「確固たる自分軸」と呼ぶもの)についても深く考えるきっかけとなりました。 こうした気づきこそが留学の最大の魅力だと思います。2年間の留学生活は、人生で最も楽しい時間と、まるで世界の底辺にいるかのような苦しい時間が交錯し、人生で最も密度の濃い時間となりました。 この経験を通じて、ちょっとやそっとの困難には屈せず、諦めず挑戦し続ける力とトラブルを楽しむ精神力を身につけることができました。 留学で得た学びや成長は、私の一生の財産です。 今後もこの経験を糧に、自己研鑽に励むとともに、後進の育成にも全力を尽くしてまいります。このような 貴 重 な 機 会 を 与 えてくだ さった W a s h i n g t o n University in St. Louisの関係者の皆様、福島県立医科大学の関係者の皆様に深く感謝申し上げます。 また、常に支え、共に歩んでくれた妻と娘、息子、遠く日本からサポートしてくれた家族、さらに私たちの留学生活を彩り豊かにしてくれた友人たちに心より感謝いたします。 円安という厳しい状況下でしたが、上原記念生命科学財団の皆様から多大なるご支援を賜り、この挑戦をWashington University in St. Louis村 田 強 志福島県立医科大学産科婦人科学講座WashUでの2年間アメリカ中央部 Missouri ←England Laboratoryメンバー(前列中央が筆者)74

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