一年のあゆみ_2024年度
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私は現在、UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)にて、膝関節における□帯や軟骨の評価を目的とした定量的MRIを用いた研究に従事しております。また、臨床現場での外来診療や手術見学を通じて、日米の医療システムの違いを日々実感しています。 旅行ではなく現地に住むことで、初めて見えてくるものがある―これが今回の留学で得た重要な気づきの一つです。研究では、臨床見学中に生じた疑問を基に、指導教官と相談して新たな研究プロジェクトを立ち上げました。 その過程で、アメリカの研究システムにおける自由度の高さとスピード感に驚かされました。 特に、研究コーディネーターがプロジェクトの進行に関与することで、効率が格段に向上している点が印象的でした。 ここにも、効率を重視するアメリカの特徴を感じます。一方で、サンフランシスコでの生活は非常に“刺激的”です。 2歳になる子供と街を歩いていると、知らない人が気さくに声をかけてくれたり、消防車や電車の運転手が手を振ったりクラクションを鳴らしてくれたりするなど、子供に優しい街だと感じます。 また、健康志向の高さにも驚かされ、ヨガマットを持ち歩く人々の多さや、オーガニック素材を扱うお店の充実ぶりが印象的です。その一方で、物価の高さや治安の悪化には戸惑うこともありました。 例えば、野球場でのビール一杯が3000円近くすることには驚きを隠せませんし、ダウンタウンではホームレスが増加し、まるでゾンビタウンのような光景が広がっています。 しかし、事前に情報をしっかりと仕入れたり、現地の日本人同士で情報交換を行うことで、不安を軽減する手助けになります。 こうした困難な状況下では、情報交換が盛んになされるだけでなく、同じ境遇の人々との団結が強まっているようにも感じられました。 これらの繋がりは、現地での生活を支える大きな力となっています。また、サンフランシスコにはIT関連のスタートアップに携わる方々が多く、幸運にも彼らと深く交流する機会に恵まれました。医師としては、ガイドラインに基づいた安定した仕事が求められますが、彼らの「他と異なることを追求する精神」や「世界市場を視野に入れた発想の広さ」には大きな影響を受けました。今回の留学で得た知識、経験、そして新たな交友関係を活かし、今後は患者さんのために何ができるかを模索していきたいと考えています。 このような貴重な経験を提供してくださった財団の皆様に、改めて感謝申し上げます。University of California, San Francisco甲斐原 拓真北海道大学大学院医学研究院整形外科学分野刺激的な都市サンフランシスコでの研究と生活アメリカ西海岸 California 80←職場から歩いて行く事ができる オラクル・パーク

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