一年のあゆみ2023
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岩イワ坪ツボ 威タケシ 博士(医学) 東京大学 大学院医学系研究科 神経病理学分野 教授上原賞受賞者記念講演6略  歴1984年3月  東京大学 医学部 卒業1984年6月  東京大学 医学部附属病院 内科 研修医1986年10月  東京大学 医学部附属病院 神経内科 医員1987年1月  日本赤十字社医療センター 神経内科 医師1988年1月  東京都老人医療センター 神経内科 医師1989年12月  東京大学 医学部附属脳研究施設 脳病理学部門 助手1992年10月  東京大学 薬学部 機能病態学教室 客員助教授1996年8月  東京大学 薬学部 臨床薬学教室 助教授1998年9月  東京大学 大学院薬学系研究科 生命薬学専攻 臨床薬学教室 教授2007年9月  東京大学 大学院医学系研究科 神経病理学分野 教授2020年4月  国立精神・神経医療研究センター 神経研究所所長(兼)褒賞対象となった研究業績「アルツハイマー病・認知症性疾患の分子病態解明と治療薬の実用化」加齢性神経変性・認知症性疾患の病態を解明し、アルツハイマー病疾患修飾療法の標的と作用メカニズムを明示した。アルツハイマー病では、老人斑の主要成分がアミロイドβ(Aβ)42ペプチドであることを証明し、家族性アルツハイマー病遺伝子プレセニリンの病因変異がAβ42の産生を高めることを発見した。更に、プレセニリンを活性中心に有するγセクレターゼ複合体の形成機構と構造機能連関メカニズムを解明した。これら成果の実用化に向け大規模臨床研究J-ADNIを組織し、治療薬の治験・実用化体制を築き上げ、抗アミロイドβ抗体薬レカネマブの治験を成功に導いた。近年では、アクアポリン4分子が神経細胞内タウ蓄積の進展と細胞変性を防御する機能を有することを発見し、グリンパティッククリアランスを新規の神経変性予防治療の標的メカニズムと位置づけた。また、パーキンソン病ならびにレビー小体型認知症についてもα-synucleinを病因タンパク質として確立した。今後も神経変性病因タンパク質の抑制を通じたより有効性の高い新規治療法の開発と実用化が大いに期待される卓越した研究業績である。(受賞者は五十音順、敬称略)生命科学の研究の進展に顕著な功績をあげ、引続き活躍中の方を、学会代表者・当財団役員・評議員・諮問委員および既上原賞受賞者へ推薦願い、19件の候補者の中から2件が選ばれました。1)上原賞(研究業績褒賞)

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