一年のあゆみ2023
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私は2022年9月から2023年8月まで、オランダのライデン大学で1年間研究留学する機会をいただきました。私の滞在したライデン大学はオランダ最古の大学で、日本語学科のある日本とゆかりのある大学です。ライデンは、長崎に医師として赴任したシーボルトが晩年日本研究に励んだ場所でもあります。日本人は少ないですが、日本に興味のある人が多く、街中や大学の施設の壁などのデザインに日本語の文字を多く見ることができます。ライデンは小さな町ですが、日本人に好意的な人が多い印象で、運河に面した美しい町並み、大学生の街で治安もよく、自転車にさえ乗ることができれば、のどかで過ごしやすい街だと思います。私は機能性ペプチドを用いた薬物キャリアを開発することを目的としてライデン大学に滞在し、合成系と生物系の2つのラボにて研究活動を行いました。私の所属する合成系のラボは、大学院生、ポスドクが30名ほど属しており、4つのグループに分かれて研究活動がなされており、私を迎えていただけたAlexander Kros教授が主宰するという大きなラボで非常に活気のある研究室でした。さらに、装置や設備等の研究環境は充実しており、隣接する病院内の研究施設との連携も可能でした。日本人は当時私一人しかおりませんでしたが、ラボの大学院生、研究者は色々な国から集まっており、人的ネットワーク面、設備面、どちらも素晴らしかったです。残念ながら1年で計画していたすべての内容を終えることはできなかったため現在は引き続き日本で継続しております。渡航当初の私の不安事は、まさかの「寒さ」でした。太陽がなく風が強い気候のオランダは、温度計、湿度計の数値は体感と大きく異なり、渡航した9月には、日本からの冬服の入った荷物を待つことができずにコートの調達が必須でした。精神的にくる私だけの寒さもあったのかもしれません。知らない世界を期待十分に学びに行ったはずなのに私の最初の学びは、「日本の良さ」でした。日本は私の思う以上に快適な国であったことを知りました。晴れの日が来ない(毎日がgray)。太陽がでない。冬が長い。日本では考えたことがありませんでした。ライデンで迎える初めての4月、みんなの待ち望む「明るい太陽」を知りました。では、長い冬を寒い、暗いと感じるのは慣れていない私だけかと周りのオランダ人に尋ねるとみんな夏が好きで、明るい太陽が好きと答えます。研究における悩みも同じ世代は同じ悩みを抱えていました。そして、素晴らしいと感じたものはみんな素晴らしいと言いました。どんなに異なる環境で過ごしていたとしても、基本的な価値観は大きくは変わらない。これは私にとっての大きな収穫でした。この留学で得た学びを帰国後の研究生活に生かしたいと考えております。末筆ではございますが、本留学に際し、滞在の機会をいただきました福岡大学薬学部薬物送達学の先生方、多大なご支援をいただきました上原記念生命科学財団に心より御礼申し上げます。101櫨川 舞Leiden Institute of ChemistryFaculty of Science, Leiden University(福岡大学薬学部薬物送達学)ライデンにて自転車の上から見える景色2023年5月撮影「明るい太陽」の貴重さを知るライデン生活

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