COVID-19パンデミックによるロックダウン解除が徐々に進んでいた2021年5月末より、Weill Cornell Medicine(以下WCM)のDepartment of Radiation Oncology, Sandra Demaria labにて研究を行っています。私は日本ではまだ(人数的に)メジャーとは言えない放射線治療専門医ですが、がん治療の最新の研究に専念する機会に恵まれ、WCMでの日々から大きな刺激を受けております。そして物価高と歴史的な円安が進行する中、妻と2人の子供(執筆時9歳、7歳)と共に過ごすNYでの3年目に、上原記念生命科学財団より多大なるご支援を頂きました。WCMはマンハッタン島のアッパーイーストエリア、東側にEast Riverに望む立地です。そしてこのEast Riverに浮かぶ縦長の小さな島、Roosevelt IslandにWCM housingが管理する物件があり、そこに家族と共に住んでいます。実際に来てから知ったのですが、WCMは、道路を一本挟んでMemorial Sloan Kettering (MSK)およびThe Rockefeller Universityと隣接しており、いずれもがん研究に関する研究のaffiliationでよく見る施設ですので、ここにいるだけで少し高揚感を覚えてしまいます。現在の所属ラボのPIであるSandra Demariaは、現在では放射線腫瘍医以外にも広く認知されるようになった「Abscopal effect」について、その背景に抗腫瘍免疫が寄与していることを初めて報告した、放射線治療による免疫反応研究の第一人者です。私自身、学位研究の頃より放射線治療による免疫反応の解明をテーマとしてきたため、現在は念願叶っての留学生活を過ごしています。研究内容もさることながら、私にとって大きな学びは、この研究環境での経験でした。研究進捗を報告するラボミーティングが定期的に開催され、そこでよく耳にするのは「I’m (not) convinced.」というフレーズです。つい、憧れの研究者からアドバイスを貰えれば、という気持ちでミーティングに臨んでしまうことがあったのですが、ここで求められるのは、むしろプレゼンターとして教える側となり、得られたデータに基づいて自身の仮説の正しさを「納得させること」でした。この点は研究者として自身の未熟さを痛感させられたところで、同時に最も勉強になった点の一つです。実際に他のポスドクたちのプレゼンテーションは皆上手で、とにかく自信たっぷりにプレゼンを行い、その後の議論も実に活発です。どうしても「ボスの意見は、一旦は素直に聞いておく」という、所謂(良くも悪くも)日本的教育精神を68佐藤 浩央Weill Cornell Medicine(群馬大学重粒子線医学研究センター)春のRoosevelt Islandにて、桜と、マンハッタンおよびQueensboro Bridgeを望むNY, Weill Cornell Medicineへ群馬から
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