長年かけて身につけてしまった私にとっては大きなカルチャーギャップであり、同時に、世界の研究者と対話するためには超えるべき壁であるのだと実感しました。言語の壁に加えてこのようなメンタリティの壁も目の当たりにし、その大きさにショックを受けながらも、これを実感できただけでも留学に来た価値があったと思っています。最後に、合計3年以上の留学を可能にしてくださった2022年2月よりニューヨークのWeill Cornell Medicineに留学しています。Weill Cornell Medicineは、コーネル大学の医科学院で、マンハッタンのアッパーイースト地区に位置しています。病院も併設されており、基礎から臨床まで幅広い医学研究が行われています。日本からのポスドクの多くがMD/PhDであり、私のようなPhDのみのポスドクは珍しいです。日本ではあまり交流のない方と知り合いになれるのは、留学の魅力の一つだと思います。留学先のPatrick Wilson研究室は、インフルエンザウイルスやSARS-CoV-2感染およびワクチン接種により誘導されるB細胞応答を研究しています。B細胞応答について有名雑誌に数多く論文を掲載しており、この分野では有名な研究室です。私も学生の頃からインフルエンザウイルスに対する抗体の研究を行っており、Patrick Wilson研究室の論文をよく参考にしていました。今後の研究生活を考えて、より専門的に学びたいと思い留学を決めました。研究室には、ポスドクやテクニシャンなど総勢12名が在籍しています(執筆時点)。テクニシャンの手伝いを受けつつ、ポスドクが各々のテーマの研究を行っています。様々なバックグラウンドのポスドクがいるので、ポスドク同士共同で研究することも多いです。週に一回ラボミーティングがあり、ポスドクが持ち回りで研究発表します。かっちりとした発表ではなく、生データを見ながら皆で話し合う雰囲気で、ミーティングは和やかに進むことが多いです。ミーティング上原記念生命科学財団の皆様、また群馬大学腫瘍放射線学教室の皆様に感謝申し上げます。またこの場を借りて、NY生活を楽しいものにしてくれる妻と子供、WCMやRoosevelt Islandで出会った多くの友人たちにも感謝をお伝えします。自身の成長と共に少しでも多くを学び、帰国後は日本でのがん治療研究に貢献していく所存です。でいろいろな意見を聞けるほか、教授は頻繁にポスドクのデスクスペースに顔を出すので、気軽に研究の相談をすることができます。むしろ相談しないと何も進んでいないように思われるので、積極的に会話するように気を付けています。個別の研究テーマ以外に、他の研究室との共同研究も多く行っています。普段交流のない研究室と繋がりを持つことができるので、非常にありがたいです。留学を考えたときに、やはり英語が心配でした。英語に苦手意識があったのですが(まだありますが)、今は特に問題を感じていません。特に私の研究室は、中国人やタイ人など非英語圏出身者が多く、うまく通じず何回も話したり、聞き返したりすることは日常なので、特に気になりません。ポスドク用のアパートは、ルーズベルト島にあります(研究室徒歩圏内にも大学のアパートがあり、私以外のポスドクはそちらに住んでいます。ここでは私が住んでいるルーズベルト島について紹介します)。ルーズベルト島は、イースト川の中に位置する細長い島です。大学や病院関係者、企業の駐在員の寮が多くあり、様々な民族の方が住んでいます。大学への行き来は、平日はアパートの前から大学まで無料のシャトルバスが出ているので、そちらを利用できます。島にはレストランやスーパーマーケットがありますが、割高なので、マンハッタンかクイーンズに買い物に行きます。マンハッタンには歩いて渡れず、地下鉄もしくはトラムを利用する必要があります。休日に大学に行きたいときも公共交通機関でマンハッタンまで行く必要があるため、不便に感じることはあります。一方で、治安は非常に良く、車もほとんど通らないため、静かで安全に過ごすことができます。徒歩圏内に公園や学校があるため、子供がいる家庭にとっては魅力的な場所だと思います。最後にこのような貴重な留学経験をご支援いただきました上原記念生命科学財団の皆様ならびに関係者の皆様に深く感謝申し上げます。69安原 敦洋Weill Cornell Medicine Department of Pediatrics(東京大学医科学研究所ウイルス感染部門)ニューヨークでの留学生活
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