2021年4月から2023年12月までNew York Medical Collegeの生理学教室Dr. Michael GoligoskyとDr. Dong Sunの研究室に留学する機会をいただきました。その間、2023年1月から1年間、上原記念生命科学財団のご支援(海外留学助成リサーチフェローシップ)のもと、血管内皮グリコカリックスをターゲットとした敗血症に対する新規治療法についての研究を継続することができました。ここでは留学生活での学びを研究面と生活面に分けてご紹介させていただきます。大学院時代に小児腎臓病を勉強していた私にとって、血管内皮グリコカリックスの研究は真新しいものでした。そのような環境で研究をしていく中で感じたことは、例え全く知らない分野であっても、その分野に飛び込んでしまえば、深く学ぶにつれて興味深く感じることは必ず見つかる、ということです。また、これまでに得た知識との接点が見つかったり、新たな視点が生まれることもありました。帰国後は臨床に従事していますが、留学生活で得た視点を活かすことができるように、自分の中で模索しながら頑張っていこうと思います。生活面に関しては、留学先がニューヨークであったことは私にとって非常に有意義でした。様々な言語やアクセントが飛び交うニューヨークの街には、どんな民族をも受け入れる雰囲気があり、真のダイバーシティを肌で感じました。その一方で、世界情勢が悪化した際には、政治的・宗教的な分断が頻繁に生じました。私がニューヨークに滞在した3年間は、ウクライナ侵攻、パレスチナ・イスラエル紛争など、世界情勢が常に緊張していた時期であったため、デモ隊の暴徒化や衝突、ヘイトクライムは日常茶飯事でした。ニューヨーク生活を通して、日本にいた頃とは比べ物にならないくらい世界情勢に敏感になり、自分事として考えるようになりました。また、生活全般において大なり小なりトラブルはつきものでした。頻繁に自宅のWi-Fiや水道管が故障したり、ご近所との価値観の相違で苦労しました。その度に英語で交渉しなければならず、言語的にマイノリティーな自分は不利だと感じざる負えない場面も多々ありました。しかし、それら一つ一つのハードルに向き合い何とか解決の道筋を見出していく中で、語学力や度胸が付いたように感じます。この3年弱の間、慣れない土地での生活に四苦八苦しながらも前向きに毎日を楽しんでくれた家族には感謝しています。妻は、好きな英語にどっぷり浸かれる環境が気に入ったようで、育児を通して知り合った現地の友人との交流や、ゴスペルサークルでの活動を楽しんでいました。生後8ヶ月でニューヨークに渡った息子は、1歳から3歳まで継続してナーサリースクールに通い、多様なバックグラウンドを持つクラスメイトや先生との触れ合いを経験しました。家族一人ひとりにとって本当にかけがえのない時間でした。最後になりましたが、留学先を紹介してくださった飯島一誠先生、留学を後押ししてくださった野津寛大先生、神戸大学小児科の先生方に心から感謝いたします。そして、研究留学を支援してくださった上原記念生命科学財団の皆様に深く御礼申し上げます。有難うございました。73石河 慎也New York Medical CollegeDepartment of Medicine(神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野)春になるとニューヨークでも桜を楽しむことができます多様性溢れる街で暮らして
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