私は2023年4月よりマサチューセッツ大学アマースト校のSrimathveeravalli Research GroupにVisiting scholarとして所属しています。当ラボは、大学院生4人と学部生数人が所属する比較的小さなラボです。主たる研究として、エレクトロポレーション(電気穿孔法)という電気パルスで細胞膜に穴をあける技術を用い、悪性腫瘍に対する治療効果や免疫応答に与える影響を中心とした多岐にわたる研究が行われています。私自身元々は臨床医であり、動物実験の経験がほとんどない中での留学でしたが、ラボのメンバーが実験設備の使い方から親切に教えてくれ、大変助けられました。また、米国ならではの熱い活発な討議には大変刺激を受けています。PIは多数のプロジェクトを主導しながらも、メンバー個々の状況を見ながら基礎研究の着実な進め方を指導してくれており、研究者としても大変尊敬できます。私は英語が堪能とは言えず苦戦することも多いですが、自身のプロジェクト完遂に向け、この上ない環境で日々学ぶことができていると感じています。本校のあるマサチューセッツ州西部のアマーストは、10マイル以内に5つの大学が存在するカレッジタウンです。小さな町ですが、学生や大学関係者が各国から集まり国際色豊かで活気に満ち溢れています。他文化に対する理解もあり、治安も良く非常に住みやすいです。町には牧場や農場があり、四季折々の自然が楽しめる環境です。春から夏にかけては町中に花が咲き誇り、少し車を走らせれば魅力的なハイキングコースが多数あります。日本と比べて湿度が低く、とても過ごしやすいと感じます。また、秋にはリンゴ狩りやコーン畑の大迷路(コーンメイズ)を開催している農場もあります。冬は最低気温が-20℃を下回るような厳しい寒波もありますが、車で1〜2時間程度の範囲にスキー場もあり、日本とは異なる雰囲気のゲレンデを楽しむこともできます。米国の他地域と同様、アマーストでも地価・物価の上昇は著しく、家賃は年々値上げされ、食費は日本の2〜3倍となります。円安も相まって経済的には留学生活が厳しい状況だと感じます。しかしこのような状況でも、現地の食材を中心とした自炊などの工夫によって、文化の違いも感じながら生活できます。また、現地の日本人コミュニティの方からは、様々な生活情報を共有していただいたりイベントやホームパーティーに参加させていただいたりと大変親切にしていただき、留学生活を彩る多くの経験をすることができました。苦労も沢山ありますが、得られるものもそれ以上にあると思いますので、留学を迷っている人には是非一歩踏み出していただきたいと思います。このような貴重な留学の機会を私に与えてくださり、基礎研究の手ほどきをしていただきました兵庫医科大学放射線科の高木治行先生や大阪大学放射線科の木村廉先生、海外留学の前例の少ない中でも快く送り出していただいた愛知県がんセンターの稲葉吉隆部長に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。また、多大なる支援を賜りました上原記念生命科学財団に、心より感謝を申し上げます。最後に、留学に同行し、大変な苦労をしながらも海外生活を実りある豊かなものにしてくれた家族に、心からの感謝を伝えたいと思います。78長谷川 貴章University of Massachusetts Amherst(愛知県がんセンター放射線診断・IVR部)研究施設の外観(UMass Amherst, Life Science Laboratories)マサチューセッツ大学留学記
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