私は2023年8月よりアメリカ、メリーランド州ベセスダにあるアメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health ; NIH)の国立ヒトゲノム研究所(National Human Genome Research Institute ; NHGRI)に留学しております。NIHには広大な敷地の中に27の研究機関と医療センターがあり、各研究機関の中に様々な研究分野と研究室が存在しています。私は、NHGRI、Inflammatory Disease Section、Medical Genetics BranchのDr. Daniel L. Kastnerの研究室に博士研究員として所属しています。渡米当初はNIHの敷地の広さと自然の豊かさに驚かされました。敷地内には、野生の鹿や鳥類、アライグマ、リスなどが多数生息しており、研究が遅くなり夜に帰宅する際には道端に野生動物をたくさん見ることができます。NIHの向かいにはウォルター・リード軍事医療センターがあり、こちらは大統領や政府関係者が通う医療機関で、過去にはトランプ前大統領が新型コロナで入院し、最近では国防長官が前立腺癌で通っている病院として知られています。ベセスダおよびNIH周辺は住宅街やレストラン、ホテル、研究施設、医療機関が広がり、大変治安が良い地域とされており、実際に渡米半年で治安が悪いと感じたことは一度もありません。円安の影響もあり、家賃や生活費の高騰という問題はありますが、気候も日本と類似しており、大変生活しやすい地域だと実感しております。私は、渡米前は膠原病リウマチ内科医として、臨床業務を行い、また、自己免疫疾患や炎症性疾患に関する臨床研究および基礎研究を行っていました。NIHでは、原因不明あるいは極端な表現型を示す炎症性疾患に関して、その原因遺伝子を探索するというテーマで研究を行っています。毎週水曜日の臨床カンファレンス(全米から紹介されてくる炎症性疾患の症例に関するカンファレンス)、毎週木曜日のラボミーティングは、大変興味深く、基礎研究を行いながら、アメリカの難治性炎症性疾患の実際の医療にも触れることができる大変恵まれた環境で、日々、研究意欲を駆り立てられています。また、NIHでは様々な研究所および研究室でその研究手法や研究成果に関する講演、勉強会が行われており、新しい知見を得る機会が豊富です。この貴重な機会に研究テーマで成果を出すことはもちろんですが、様々な新たな知見を持ち帰ることができるよう勉強していきたいと考えております。最後になりますが、今回の海外留学に際してご支援いただいた上原記念生命科学財団の皆様、横浜市立大学ならびに横浜南共済病院の先生方に心より御礼申し上げます。81國下 洋輔National Human Genome Research Institute (NHGRI)National Institutes of Health (NIH)(横浜南共済病院膠原病リウマチ内科)Medical Center駅からNIHキャンパスの一部を望む一枚写真中央の茶色の大きな建物がクリニカルセンター(ビルディング10)で筆者が研究を行っている施設NIHでの研究留学
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