一年のあゆみ2023
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私は2022年4月より、アメリカ合衆国ノースカロライナ州のデューク大学に研究留学をしています。ノースカロライナ州はアメリカ合衆国の南東部に位置しており、晴天日が多く温暖で快適な気候で、自然豊かな大変過ごしやすい場所です。デューク大学は、その中でも「リサーチ・トライアングル」と呼ばれる高等教育機関や研究所が集中する学術都市に位置しており、研究型総合大学として知られています。留学先を選ぶ際に、気候が温暖で過ごしやすく、また治安が良く、家族の帯同に不安がない場所にあり、さらに呼吸器領域において魅力的な研究をしている研究室のある所を探していた私にとっては、ベストな選択と考えこちらに留学することになりました。私が所属する研究室は、PIのPurushothama Rao Tata先生が2017年より主宰しています。主に正常肺胞上皮細胞、線維芽細胞の分化・再生機構の解明、肺線維症や肺癌の分子生物学的機序の解明を目標とした研究を行っています。留学前は主に肺癌や肺線維症の病態における遺伝子制御機構について研究を行ってきましたが、これらの疾患に対する既存の治療法は未だ十分とは言えず、より良い治療法を発展させるためには、各疾患の根源となる病態機序をより深いレベルで解明することが必要だと感じていました。そこで、留学先の研究室では、正常な肺胞上皮細胞がどのようなメカニズムで分化・再生を行い、その過程のどこで問題が起きるとどのような疾患に至るのか、という点にフォーカスを当てて研究を行っています。日本で行っていたのとは全くと言ってよいほど異なる実験手技や解析方法を習得する必要があり、当初は戸惑うことも多くありましたが、研究室のスタッフや同僚にも恵まれ、忙しくも充実した日々を過ごしています。研究室は多様なバックグラウンドを持ったメンバーが集まっており、出身国だけ見てもアメリカ、インド、ポーランド、日本、イラン、中国、ベトナムと多彩です。各々のメンバーがそれぞれの興味に応じて、多様なテーマに取り組んでおり、大変刺激的な環境です。また、他の研究室とのコラボレーションも活発で、時には大学や国の垣根さえ越えてデータを共有し、大きなプロジェクトを進めていくことを厭わない姿勢には驚かされつつも、見習わなければいけないと感じています。日常生活については、日本各地から留学している方々とも知り合うことができ、週末や長期休暇は海、山、バーベキュー、旅行などと大変充実した日々を送ることができています。家族もアメリカでの生活を満喫しており、貴財団からの助成が留学生活の大きな支えとなっています。今回の留学に際しては、臨床医として勤務する生活から離れることに不安があったことは事実ですが、臨床医として働けない分、それ以上に医学の発展に還元できる成果を出すことを目標として、有意義な留学を送りたいと考えております。最後になりましたが、当時コロナ禍にもかかわらず留学を許可してくださった東京大学呼吸器内科の長瀬隆英前教授、長期の留学を許可して下さっている鹿毛秀宜教授、また留学生活を財政面でサポートしてくださり、充実した研究生活を送れるようにご支援賜りました上原記念生命科学財団の皆様に、心より感謝申し上げます。82宮下 直也Duke University School of Medicine(東京大学大学院医学系研究科呼吸器内科学)デューク大学のチャペルデューク大学留学体験記

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