一年のあゆみ2023
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2023年7月よりOregon Health & Science University (OHSU) のEmily Huang先生の下に研究留学をさせていただいております。OHSUは1887年に設立された米国オレゴン州唯一の学術保健センターで、ポートランド市内と周辺に4つのキャンパスと病院を持っています。私は丘の上にあるMarquam Hill Campus のOregon Institutes of Occupational Health Sciencesに所属しています。労働者の健康や安全の向上を目的とした大規模な海外の介入研究論文を目にします。しかし、実際どのように参加者(労働者)にアプローチし、介入を準備し行うのか、さらに、どのように評価指標を選択し評価を行うのか、日本で小規模な介入研究しか行ったことない私は、より深く学びたいと考えていました。2018年末から受入先を探し始めましたが、受入先の先生が退職されたり、COVID-19によりそもそも渡航不可となったりと難航していました。COVID-19が少し落ち着き始めた2022年、幸運にもメンターである中田光紀先生から労働者に対して多数の介入を行っているHuang先生をご紹介いただき、また、貴財団のご支援をいただき、ようやく研究留学が実現しました!Dr. Emily Huang’s Safety Climate Labでは、現在、主に建設業の労働者を対象に安全や健康の向上を目的とした調査票の開発や介入研究を行っています。そのため、安全ヘルメット、ゴーグル、安全ベスト等を着用して、米国ならではの大規模な建設現場に足を踏み入れ、現場で働く方々に対して予備的な介入研究を行う機会もいただきました。こちらでしか味わえない貴重な体験です。上記の他にも日本との違いを大いに感じています。まず1点目は、様々な性別、民族の方が共に働いていることです。建設業で活躍されている女性も日本と比べかなり多く、町でもNon-binaryの方を普通に目にします。2点目は、PIやラボメンバーの視点、研究アプローチ、論文や研究計画書の書き方です。ラボの主要メンバーのバックグラウンドは組織心理学であるため、私のバックグラウンドである公衆衛生とかなり異なると感じます。3点目はラボのあり方です。解析が得意なメンバー、理論展開が得意なメンバー、ビデオ作成が得意なメンバー等それぞれが得意分野を生かして効率的にチームで研究を進めています。また、ディスカッションが頻繁に行われることにも驚いています。例えば、今後進める研究計画を練る際もメンバーは臆することなく意見を述べ提案しながら、PI含め皆で研究計画を立てています。チームでより良いものを作っていこうというスタンスを強く感じます。一方、私はディスカッション中の発言内容やタイミングに大変苦労していますが、日々必死に加わろうとしています。こちらの生活は、円安や物価上昇のため金銭面の苦労はかなりあります。しかし、先生方やラボメンバー、研究所の皆さんが大変親切で、働き方もオン・オフが明確なのでわりと快適に過ごせています。残りの研究留学期間も周りの先生方や家族に感謝しながら、大いに吸収させていただこうと思います。最後になりますが、助成いただきました上原記念生命科学財団の皆様に深く御礼申し上げます。89頓所 つく実Oregon Health & Science University(公益財団法人医療科学研究所)Malnomah Falls米国オレゴン州ポートランドより

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