Moi! こんにちは。私は2023年の9月より、3歳の娘とフィンランドの古都トゥルクでポスドク生活をしています。トゥルクはかつて首都であったフィンランド最古の都市です。ここにはかつてフィンランドの最初の大学であるトゥルク王立アカデミーがありましたが、1827年の大火事や、隣国ロシアからの政治的な影響でヘルシンキに移転されました。その後、政治的影響を受けない、純粋な国民のための大学をトゥルクで作ろうという機運が高まり、住民の資金で現在のトゥルク大学が1920年に設立されました。大学の標語が「自由な民衆から自由な科学の贈り物」であると聞いた時、学問の自由のすばらしさと人々の誇りを感じ、身震いしました。そんな歴史ある美しい街トゥルクでの娘との生活は、想像はしていましたが、大変でした。最初の3ヶ月は夫と母に交代で助けてもらいました。家族の助けなしではとても生活のセットアップはできませんでした。娘は英語教育を行っている保育園に入りました。税金の高いフィンランドですが教育支援は充実しており、保育料が安いことはとても助かりました。世界で唯一、父親が母親より長く子供と過ごす国だというフィンランドですが、実際に街中で子供を連れたパパを見かけました。またフィンランドはヨーロッパで初めて女性に参政権を認めた国でもあり、男女平等において先進国であると感じました。私の所属するトゥルク大学歯学部の教授8人のうち5人が女性です。娘が保育園に慣れず、精神的に参っていたとき、女性教授の皆様が自分の体験談を交えて励ましてくださいました。子供を持ってもアカデミックキャリアを積めるのだ、ロールモデルがいることはこんなにも心強いのかと感じました。私は、歯科治療に対する恐怖感(dental anxiety)を大学院時代より研究テーマとしています。日本では進んでいる分野とは言えず、研究内容をディスカッションできる環境がないことで閉塞感を感じていました。受け入れ研究室のSatu Lahti教授は明るくエネルギッシュな女性で、dental anxiety研究の第一人者です。トゥルク大学にはFinnBrain Birth Cohort Studyと呼ばれる出生コホート研究があります。Lahti教授はコホート内の親子のdental anxietyを継続して測定しているため、子供がどのようにdental anxietyを形成していくかを詳細に検討することができます。最先端の研究に参画することができ、研究者として成長するための貴重な経験ができている最中だと感じます。FinnBrainチームはとても学際的で、優秀な研究者が分野を超えて在籍しています。怖気付くことなくコミュニケーションをとり、良い研究をしていきたいと決意を新たにしています。最後になりましたが、どうしてもLahti研究室でポスドクしたいと考えていた私は、fellowshipの獲得が絶対条件でした。内定のメールをいただいた時の、人生が変わるような衝撃は忘れられません。私の研究計画を評価し、支援を決定してくださった上原記念生命科学財団の皆様、評価者の皆様に心より感謝申し上げます。Moi moi (Bye)!97小川 美香University of Turku, Institute of Dentistry(福岡歯科大学診断・全身管理学講座麻酔管理学分野)アウラ川とトゥルク大聖堂フィンランドでの母子研究留学
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