2023年11月よりスウェーデンLund大学、Department of Clinical Sciences, Center for Primary Health Care Researchに留学させていただいています。こちらはやっと長い冬が明け、昼間が長くなり、日差しも暖かい陽気になってきました。色とりどりの花も咲き誇っています。私の所属する島根大学医学部とCenter for Primary Health Care Researchは以前から交流があり、受入教授であるPatrik Midlöv教授をはじめ、顔なじみの研究者も多くいましたので、スムーズに留学生活をスタートさせることができました。私の誕生日が11月で到着して間もなかったのですが、同僚たちに祝ってもらい、おかげ様で寂しさとは無縁の楽しい留学生活を送っています。私の研究テーマは、「総合診療医を中心とするSweden医療体制の日本での応用」です。スウェーデンでは、全国民が基本的に地域のプライマリヘルスケアセンター Primary Health Care Center (PHCC) に登録され、PHCCに所属する複数の総合診療医General Practitioner (GP) がプライマリケアを担っています。GPは、複数の疾患を抱える患者の複雑な病状及び社会的背景を総合的に把握しており、継続的な全人的医療が実現されています。また、病院に勤務する専門医への紹介が必要時のみに徹底されており、GPと専門医との棲み分けが確立しています。このため、日本のように地域の病院で働く専門医が、よくある疾患common diseaseであふれる外来診療と長期間の入院患者の診療に疲弊することも回避されており、GP、専門医ともにライフワークバランスのとれた生活が実現されています。さらに、スウェーデンではスペシャリストナースSpecialist Nurse (SN) と呼ばれる特別な訓練を受けた看護師が大きな役割を担っています。例えばPHCCで働くSNである地区看護師は、医師の許可なしに自らの判断で診察・処方を行えます。SNが経過良好の患者の外来診療を担うことで、SNが医師と業務と責任を共有し、医師の過重労働は回避され、医師の労働負担の適正化をもたらすだけでなく、患者の外来通院に伴う負担軽減と医療費抑制、看護師のモチベーション向上を実現させています。このスウェーデンのプライマリケア体制を日本に応用すべく、現在現地調査やインタビュー調査などを行い、これらを論文にまとめています。スウェーデンは広く移民を受け入れています。私の滞在しているMalmöも多国籍な町で、様々なバックグラウンドを持った人々が多く暮らしています。Language caféは、スウェーデン語を母国語としない人々がスウェーデン語で交流するために週に数回、市立図書館で開催されており私もできる限り参加しています。まだまだほとんどスウェーデン語は話せませんが、いろいろな国籍の人が頑張ってスウェーデン語で話しているのを見るととても刺激になります。このLanguage caféで友人も多くできました。スウェーデンではこれから春から夏にかけて、一年で最も素敵な季節になるそうで、とても楽しみです。残り半年も、自分のできることに精いっぱい、全力で取り組みたいと思っています。最後に、この留学を支援くださっている上原記念生命科学財団、そして医局員の少ない中、留学を支えてくださっている島根大学医学部救急医学講座の岩下義明教授を初め先生方に心より感謝申し上げます。98佐藤 利栄Lund UniversityDepartment of Clinical Sciences, Malm(島根大学医学部救急医学講座)OfficeであるClinical Research Centerにて〜スウェーデンの風にのせて〜留学だより
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